少女ムシェット
ムシェットを見てほしい。
映画には、表情による過剰な心理描写は必要ない。過剰な演技は人間を単純化しているだけだ。
ムシェットが自宅の汚い布団に座り、フレーム外に目を向けている。この時のムシェットの顔が凄い。ムシェットの存在そのものがただ画面に映し出されている。疲労、絶望、憎しみ、悲しみ、その全てがムシェットという存在に表れている。
ムシェットがゴーカートで遊び初めて笑顔を見せるシーンがある。ムシェットの乗っている車にドンドン他の車がぶつかり、ムシェットの身体がぐねぐね曲がっている。いびつな笑顔とぐねぐね曲った身体。どうしても笑ってしまう。可哀想なムシェットがつかの間の幸せを感じているその光景にどうしても笑ってしまう。 私は酷い人間でしょうか。ムシェットの存在がそうさせているのでしょうか。